以前、そろばん教室でのトイレの一件を書きました。その続きになります。

あのあと、無理に辞めさせて息子の心の問題に発展してしまうのも心配で、「もうしばらく、私が付き添って一緒に通おう」と決めていました。

でも今、正直に言うと——本当に辞めるべきか、真剣に悩んでいます。

良い日も、ちゃんとあった

まず、公平にお伝えしておきたいことがあります。

付き添うようになってから、うまくいった日も何度かありました。教室に入ってすぐ、きちんと挨拶をして、返事もかっこよくできて。先生が「気持ちいいねぇ」とおっしゃるくらい、ちゃんとできた日もあったんです。

だから、ずっと嫌なことばかりだったわけではありません。それだけに、余計に悩ましいのですが……。

あの日、歯車が狂ってしまった

先日のことです。

その日の息子は、遊び疲れていたのか、席についてすぐ「時間」が気になり始めました。教室のどこに時計があるか分からず、壁越しにいる私に「今何時?」と聞いてきたんです。

私は何を言っているのか聞き取れず、つい「今は話せないよ」と返してしまいました。……今思えば、ここでちゃんと応えてあげられていたら、と悔やまれます。

小さなボタンの掛け違いって、こういうところから始まるんですよね。息子にとっては「時間が分からない」という不安がふくらんでいく一方で、私はそれに気づいてあげられなかった。あとから思えば、あの一言の前に、時計の場所を教えてあげるだけでよかったのかもしれません。

そこから、息子はなかなかそろばんを弾き始められませんでした。気持ちの整理がつかないまま、足をぶらぶらさせてしまって。

先生からは「足をぶらぶらしていたらそろばんはできないよ。じゃあそろばんは触らず、30秒だけ足を動かして」と言われ、その通りにしていました。でも、そのあと「できるなら始めて」と言われても、息子はまだ気持ちが整わず、始めることができなかったんです。

1時間、耐えていた息子

そこからでした。

息子に向けて、だんだんと厳しい言葉が続くようになりました。「年少さんと同じくらい」というような、幼い子ども扱いをする言葉が、繰り返し。正直、聞いていて胸が痛くなるような内容でした。

先生には先生の、長年の指導方針があるのだと思います。頭ごなしに「ひどい」と決めつけたいわけではありません。厳しさで伸びる子も、きっといるのでしょう。

でも——うちの息子には、その関わり方は合わなかった。それだけは、はっきりと感じました。

息子は結局、言われ続けるまま、1時間を耐えました。そして「もう上がっていいよ」と言われて、教室を出てきました。

その目には、涙がにじんでいました。

教室から出てきた息子の顔を見た瞬間、私は「あぁ、無理をさせてしまった」と胸が締めつけられました。泣くのを必死にこらえている、あの表情。親なら分かる、あの顔です。

「耐えた息子は、むしろすごい」

大人でも、職場で1時間ずっとそんなふうに言われ続けたら、精神的に参ってしまうと思います。

それを、6歳の息子が、途中で暴れることも逃げ出すこともなく、じっと座って耐えていた。それって、逆にすごいことなんじゃないか。私はそう思いました。叱られるべきことをしたわけじゃない。ただ、気持ちの整理に時間がかかっただけなのに。

学校とのちがいに、考えさせられる

どうしても、比べてしまいます。

小学校の先生は、息子一人ひとりに合った対応をしてくださって、さらにステップアップ教室まで紹介してくれました。そこでの学びもあって、息子はこの数か月で、本当に大きく成長しました。「合った環境」に置いてもらえると、子どもってこんなに変わるんだと、実感しています。

だからこそ、思うんです。同じ子が、片方では認められ伸びていて、片方では厳しい言葉を浴び続けている。この差は、いったい何なんだろう、と。

問題を抱えている子だから、そういう対応をされてしまうのでしょうか。そう考えると、やりきれない気持ちにもなります。でも、学校が証明してくれています。関わり方ひとつで、この子はちゃんと伸びる。だとしたら、無理して"合わない場所"にしがみつく必要は、ないのかもしれません。

いちばん心配なこと

私がいちばん心配しているのは、息子の心への影響です。

きつい言葉を浴び続けると、それを覚えてしまって、今度はお友達に同じような言い方をしたり、私たち家族に向けて言い出したりしないか。せっかく「相手に優しくする」を覚え始めたところなのに、と。

そして何より、このままでは、勉強やそろばんそのものが嫌いになってしまうんじゃないか。 それが一番こわいんです。「できるようになってほしい」で始めた習い事で、「学ぶことが嫌い」になってしまったら、本末転倒ですよね。

天秤にかけて、見えてきた答え

正直に、現実的な話もします。

契約はあと半月ほど残っていて、金額にすれば数千円です。「もったいない」という気持ちも、ゼロではありません。

でも——息子の心が壊れてしまうことのほうが、ずっと大きな代償だと思うんです。

数千円と、息子の「学ぶことへの気持ち」。天秤にかけたら、答えははっきりしている気がします。

まだ最終決定はしていません。息子の気持ちも聞きながら、もう少しだけ考えます。でも、私の中の針は、確実に「息子の心を守る」ほうに傾いています。

おわりに

習い事って、「せっかく続けてきたのに」「途中で辞めるのは根性がない子になるのでは」と、親のほうがいろんな思いで縛られてしまいがちです。

でも、いちばん大切なのは、子どもが笑っていられること。学ぶって、本来もっと楽しいことのはずですよね。

同じように、習い事を続けるか辞めるかで悩んでいるお母さん、お父さん。「合わない場所から離れる」のは、逃げでも甘やかしでもないと、私は思います。一緒に、子どもの心を真ん中に置いて、考えていきましょうね。

はなより