以前、そろばん教室を続けるか辞めるか悩んでいる話を書きました(その記事はこちら)。

あのあと、わが家は新しいそろばん教室を探し始めました。そして先日、ある教室の体験に行ってきたんです。今日は、その体験と、そこで私がぶつかった「習い事って、誰のもの?」という問いについて書きます。

年配の先生が、息子をちゃんと見てくれた

体験に伺った教室の先生は、少し年配の方でした。

まず先生は、息子にそろばんを持たせて、実際にそろばんを弾く様子をじっくり見てくれました。そのうえで、ひとこと——「大丈夫ですよ」。

息子の"今"をちゃんと見たうえでの「大丈夫」。この言葉に、私はふっと肩の力が抜けました。前の教室でのつらい記憶があっただけに、まず受け止めてもらえたことが、本当にありがたかったんです。

「うちの子、じっとしているのが苦手で……」と正直に伝えても、先生は動じませんでした。長く子どもたちを見てきた方なんだな、というのが、その落ち着いた様子から伝わってきて。前の教室では「迷惑をかける子」という目で見られている気がして苦しかったので、この受け止め方の違いに、ちょっと泣きそうになりました。

トロフィーに一直線、そして歩き回る息子

とはいえ、そこはうちの息子。おとなしくしているわけがありません(笑)。

教室にたくさん飾られたトロフィーに目を輝かせて、私と先生が話し始めた瞬間、すっと席を立って近くまで見に行く。そして、触りそうになる……。私は先生とお話ししながら、「触らないよ」と何度も声をかけ続けました。

歩き回る息子に、先生はこう声をかけてくれました。

「そろばんをするなら、おしゃべりしたり歩き回ったりする人なんて、いないよ」

叱るというより、“そういうものだよ"と伝えてくれる感じ。厳しく突き放すのでもなく、甘やかすのでもない。その距離感が、私にはとても好ましく映りました。

多動の傾向がある子に対して、頭ごなしに「ダメ!」と言う大人はたくさんいます。でも、この先生の言い方には、どこか"信じてくれている"響きがあった。「あなたも、できるようになるよ」という前提で話してくれている気がして、それだけで、息子を任せてみたいと思えたんです。

「昔の子どもはこうだった」という言葉

先生いわく、この教室では、私が子どもの頃に通っていたそろばん教室のように、たまに「ねがいましては~」という読み上げの声が聞こえることもあるそう。そして、それでも自分に関係のないときは、ひたすら自分の課題に集中できるようになっていくのだと。

息子も、そんなふうに集中できるようになってくれたら……と願わずにはいられません(今の姿を見ると、まだまだ先は長そうですが・笑)。

先生は「昔の子どもはこうだった」とも言っていました。良くも悪くも、昔ながらの、どっしりした指導。私は、この先生になら任せたいな、と思いました。「ここだ」と。

でも、肝心の息子は……

私の中では、もう気持ちが固まりかけていました。

ところが。肝心の息子が、こう言い出したんです。

「他のそろばん教室も、行ってみたいな~」

……えぇー!母はもうここに決めかけていたのに(笑)。

正直、「ここがいいのに」という気持ちは、今もあります。私の目には、この教室がいちばん息子に合っているように見える。でも——。

習い事は、誰のもの?

ここで私は、ハッとしました。

通うのは、私じゃない。息子自身です。

前の教室で、息子がつらい思いをしたのを、私はすぐそばで見てきました。あのとき痛感したのは、「親がいくら良かれと思っても、子ども本人が納得していなければ、続かないし、意味がない」ということ。

だとしたら、今回もそうですよね。私が「ここだ」と思っても、息子が「うーん」と思っているなら、それは息子にとっての"正解"ではないのかもしれない。少なくとも、今はまだ。

親が敷いたレールに乗せるのは簡単です。でも、そのレールの上を歩くのは子ども。嫌々歩かせても、きっとどこかでつまずく。それなら、少し時間がかかっても、本人が「ここを歩きたい」と思える道を一緒に探すほうが、遠回りに見えて近道なのかもしれません。

もう少し、時間をかけて探そう

そんなわけで、わが家の教室探しは、まだ続いています。次の教室は、まだ決まっていません。

以前の私だったら、「もう決めちゃいなさい」とせかしていたかもしれません。でも今は、違います。息子が「ここがいい」と、自分で納得して通えること。それがいちばん大事だと、前の教室での経験が教えてくれたから。

だから、もう少し時間をかけて、いくつか体験に行ってみようと思います。母としては「早く決まってほしい」という気持ちもあるけれど(笑)、ここは息子のペースを尊重して。いくつか見て、そのうえで息子が「やっぱり最初のところがいい」と言うなら、それはそれで納得して通えるはず。回り道も、本人が選んだ道なら意味があります。

おわりに

習い事選びって、親の理想と、子どもの気持ちのすり合わせなんだなと、あらためて感じています。

親が見つけた「良さそうな場所」と、子どもが感じる「通いたい場所」は、必ずしも一致しない。でも、最後に通って続けていくのは子ども自身だから、その気持ちを置き去りにはしたくない。

同じように、お子さんの習い事で悩んでいるお母さん、お父さん。焦らなくて大丈夫。子どもが「ここがいい」と思える場所に出会えるまで、一緒に、気長に探していきましょうね。わが家も、まだ旅の途中です。

はなより