玄関のドアが開いた瞬間、見知らぬ女の子が立っていました。
はなです。
ランドセル背負ったまま、知らない子がいる
在宅で仕事をしていたわたしは、「ただいまー」の声で玄関に出ました。
息子の後ろに、ランドセルを背負ったままの女の子。
「……だれ?」
わたし、ドアのところで完全に固まりました。見知らぬ女の子が、満面の笑みでわたしを見ている。息子は「あ、ままだ」みたいな顔で、別に何もおかしいと思っていない様子。
この温度差よ。
「遊びに来た」らしい
息子はけろっとした顔で言いました。
「遊びに行く約束したから来てもらった」
この子、うちに来ること知ってたんだ。
「二人で手繋いで帰ってきたんよ」とも言っていました。
仲良いな。ほっこりする場合じゃないけど、ちょっとほっこりしました。
手を繋いで帰ってくるって、なんてかわいいんだ。入学してまだ1ヶ月そこそこで、こんなに仲良くなれるもんなんだ、と少し感心しました。うちの子、学校ではこんな一面があるんだ、と。
でもそれを言う前に、まず「うちの子が知らない女の子を連れてきた」という現実に対処しなければならない。
とりあえずおやつを出した
「ちょっと待ってね」と言いながら、頭の中は大混乱。
在宅の仕事は締め切り直前。でも子どもを放置もできない。
とりあえずジュースとおやつを出して仕事部屋に戻ったものの、「一体どこの子なんだ」が頭から離れない。
子ども二人に任せておくのも不安だし、様子を見に行くと仕事が止まるし。廊下から「ちゃんと遊んでる?」と耳だけ傾けながら、何も集中できない状態でキーボードを叩いていました。
仕事に限らず、在宅で何かやっているときに子どもが帰ってくる——これだけで状況は複雑になるのに、さらにそこに「知らない子がついてきた」が加わるとこうなります。完全にパニック。
お母さんに連絡したい
「ねえ、お母さんの連絡先教えて」と女の子に聞きました。
「知らない」
「お母さんに連絡していい?」
「しなくていい」
…しなくていい、はさすがに無理です。
女の子はニコニコしていて全然悪意はないんですが、「連絡しなくていい」はさすがに通せない。お母さんのほうは今ごろ「うちの子どこ?」ってなってるはずで。小1が連絡なしに友達の家についていって、その家のお母さんが黙ってたら、絶対心配します。わたしだったら心配する。
というか、この子のお家でもわたしが知らないお母さんに当たるわけで。お互い様なんですよね、こういうのって。
学校に電話しようとしたら「ダメ」と止められた
「じゃあ先生に聞くね」と電話しようとしたら、女の子に「ダメ!」と止められました。
小1の子が「ダメ!」と言ったくらいで止まるわたしじゃない。
先生に電話したら怒られると思ったのかな。でも今は連絡を取ることが最優先です。大声で「ダメ!」と言いながらもにこにこしている女の子、なんかかわいかった。でもとにかく電話はさせてもらいます。
とにかくこの子をお家に送り届けようと、車を出す準備をしました。
仕事?もう諦めました、その時点で。締め切り?また何とかします。
そのとき、電話が鳴った
「プルルル……」
学校からでした。
「○○ちゃんを探しているんですが、ご存知ですか?」
先生方が総出で探していたそうです。
「います!うちにいます!」
思わず大きな声が出ました。女の子もびっくりしたように目を丸くしていました。
先生の声に、ほっとした感じと焦った感じが混ざっていた。学校側もかなり心配していたんだと思います。こんなに素早く動いてくださって、本当にありがたかった。
グラウンドでもう少しだけ
先生と合流して、事情を説明しました。
先生も女の子のご両親も無事で安心。
二人ともまだ遊び足りなかったのか、グラウンドでもうちょっとだけ遊んで、それからお別れしました。
並んでグラウンドを走り回る二人の後ろ姿を見ながら、「この子たち、本当に仲良しなんだな」と改めて感じました。こんなハプニングを起こしてしまうくらい、一緒にいたかったんだな、と。
怒る気持ちと、ほっこりする気持ちが半々でした。
息子に友達ができた
帰りの車の中で、ぼんやり思いました。
こんなにやんちゃな息子でも、仲良くしてくれる子がいるんだ。
しかも手を繋いで帰ってくるくらい、気が合う子が。
多動気味でルールが守れないこともある息子を、「一緒に帰ろう」「遊ぼう」と言ってくれる子がいる。それがどれだけ嬉しいことか。正直、入学前は「友達できるかな」が一番の心配でした。
子どもって、親が思う以上にちゃんと人と繋がっていくんだな、と思いました。
嬉しいような、ちょっと寂しいような、不思議な気持ちでした。
仕事は……結局その日、全部終わりませんでした。
翌朝、締め切りギリギリで提出しました。ご報告まで。
「勝手に連れてきた」問題、どう話す?
帰宅後、息子とちゃんと話しました。
「今日、○○ちゃんに許可もらってきた?」
「……うん」
「お母さんに?先生に?」
「……二人に」
本当かどうか怪しかったけど、とりあえず話を聞きました。
「でもランドセル置いてから来てもらわないとあかんって、先生から教わったやん」
「でも遊びたかった」
「うん、遊びたいのはわかる。でもままは困るし、○○ちゃんのお母さんも困る。次はちゃんとルール守って」
「わかった」
どこまでわかったかはわかりません。でも毎回ちゃんと話すことが大事だと思っているので、根気よく続けます。
子育てって、同じことを何度も言い続けることなんだな、とこういうときに実感します。一回言ってわかるなら苦労しない。でも何度も何度も言い続けることで、少しずつ体に染み込んでいく。
それを信じてやっています。
在宅仕事も、合間を縫って何とかしています。たぶん。
はなより